2022.12.31

【松山英樹】熱狂の渦に包まれたZOZO CHAMPIONSHIP 2019を振り返る

アコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブを舞台に行われたPGAツアー「ZOZO CHAMPIONSHIP」。主役のひとりとなった松山英樹プロに、2019年とともに大会を振り返ってもらった。 ※2020年アコーディアゴルフ会報誌の掲載記事を再編。

ZOZO CHAMPIONSHIP2019/松山英樹プロ

「あの大雨の翌日に再開できるなんて、選手たちもみんな驚いていました」

2019年10月に千葉県のアコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブを舞台に、日本で初となるPGAツアー「ZOZO CHAMPIONSHIP」が開催。何もかも規格外だった大会を、松山英樹プロに振り返ってもらった。

「日本でこんなに早くPGAツアーが開催されるとは、正直思っていませんでした。開催できて本当によかったと思います。自分のプレーを振り返って特別に何かを感じることはありませんが、コースに関しては"すごい"という印象が残っています」

開催されたのは、台風21号が日本各地に多大なる被害を残した週。開催コースがある千葉県は特に大きな被害を受け、10月25日(金)に開催予定の大会2日目は当日の朝、中止が決定した。

10月26日(土)は安全などを考慮して無観客での開催が決定されたが、雨の降り方を目の当たりにしていた松山プロは、まさか開催できるとは思っていなかったという。

「選手たちもみんな驚いていました。前日は10番ホールなんかフェアウェイが水浸しだったのに、土曜に行ったら『水がないじゃん!』って、本当に驚きました」

松山プロをはじめPGAツアーで戦う選手にとって、短縮での競技は基本的にありない。どんな形であれ72ホールをプレーすることは、しごく当然と考えられている。ところが、尋常ではない雨とその被害から、10月26日もできないだろうと思っていたそう。

「コースだけじゃなく練習場の被害もすごかったですし、あの状況からよく実施できたと思いました」

大会は10月28日(月)にまでずれこんだものの、72ホールを完結。タイガー・ウッズがPGAツアー記録に並ぶ通算82勝目を飾ったが、そのタイガーを追い詰めたのが松山プロ。彼にコースはどのように映ったのだろうか。

「フェアウェイが狭い印象でした。練習ラウンドでの感想はとにかく真っ直ぐに打つしかないという感じ。そのなかで4番ホール(クイーンコース16番ホール)と5番ホール(クイーンコース17番ホール)は、特に印象に残っています。日本にはあまりない池の絡み方をしたホールですし、ショートもしっかり池が効いていて、結構入れていた選手がいましたからね」

松山プロにとってアコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブは、あまり得意ではない部類に入るコースという。それでも優勝争いを演じられた要因を、本人に分析してもらった。

「コースの状況が必ずしも結果に結びつくわけではありません。でもあの週に関しては、日本のファンの皆さんの声援が力になったことは間違いありません。また、あれだけギャラリーが入ってくれるとコースが広く見えるというか、フェアウェイがしっかり見えて打ちやすくなるんです」

10月22日(火)の練習ラウンドには1万1,063人ものギャラリーが、コースへと足を運んだ。最終ラウンドの残りが持ち越しとなった28日(月)にも多くのギャラリーが訪れ、22日からの1週間で計5万4840人もの人々がハイレベルな戦いに酔いしれた。

ZOZO CHAMPIONSHIP2019/松山英樹プロ
多くのギャラリーの声援が大きな力になったことは間違いないと振り返る松山プロ。日本で初めて行われたPGAツアーの開催をプロ自身も喜んでいた。

また、昨今の日本男子ゴルフの人気低迷についても聞いてみた。

「男子は男子なりに、魅せるゴルフをしなければならないと思います。大事なことはどう魅せるか。それにはコースセッティングも大きく影響してくると思います。舞台があって演者がいるわけで、例えばPGAツアーの選手が来ても、環境が整っていないコースでゴルフをしていても盛り上がらないですよね。今回のアコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブがそうだったように、選手のプレーを引きだしてくれる舞台の存在は、実は本当に大切なんです」

当たり前だが、日本のファンは松山プロが日本で勝つことを望んでいます。間近に迫ってきた東京オリンピックを松山プロはどのように捉えているのだろうか。

「全然考えていないんです。当然出たいのは出たいのですが、試合はそれだけじゃないですから。PGAツアーで勝っていれば出られるだろうし、自信もついてメダルを狙えるようなゴルフもできると思います。オリンピックだから特別なわけではなく、勝ちたいと思って試合に出るわけで、そこで優勝を目指す。ただそれだけです」

最後にアマチュアゴルファーに向けて、松山プロからちょっとしたアドバイスもらった。

「自分たちはコースを攻略するため、いつも同じ状態で試合ができるように練習をします。練習でルーティンを決めるのもそのためです。自分なりのルーティンを持つことが重要です。また、初めてラウンドするコースではとにかく見えるところに打っていくこと。もちろんコースにもよりますが、基本は見えるところに打つことです」

世界を舞台に活躍する松山プロの言葉を肝に命じて、我々アマチュアゴルファーも楽しくプレーしたい。

ZOZO CHAMPIONSHIP2019/松山英樹プロ
優勝は惜しくも逃したものの、輝きを放ち続けた松山プロ。苦しむこともあった2019年シーズンだが、確かな復調の手応えを習志野で感じたという。

松山英樹/Hideki Matsuyama
1992年愛媛県生まれ。4歳でゴルフを始め、東北福祉大学で腕を磨く。2011年のマスターズで27位に入り、日本人初のローアマに輝く。同年の国内男子ツアーの「三井住友VISA太平洋マスターズ」で史上3 人目となるアマチュアでのツアー制覇を達成。2013年にプロに転向し、日本ツアーで8勝。2013年から本格参戦しているP G Aツアーでは5勝を挙げており、2019 年のZOZOCHAMPIONSHIPでは2位に。

文:出島正登 写真:前田 晃(MAETTICO)

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